天使なんていなかった。
天使なんていなかった。
彼女は天使じゃなかった。
成長する度膨らむ胸部。伸びる手足。
スラリと伸びた身長も何もかも、僕を否定するようだった。
透き通った碧眼も今では濁ってしまった。
賛美歌を想起させた声も今では聞こえなくなってしまった。
太陽は君を見捨てなかった。
その代わり君から羽を奪ってしまった。
天使なんていなかった。
世間を知ってしまった。
これが常識なんかじゃない。女は男が好き。
男は女が好き。誰が決めたルールですか。
生きていくのにお金がかかる。
アダムとイブはリンゴを食べてしまいました。
蛇は殺しました。
天使なんていなかった。
今では黒く染められた髪も、学校の先生に怒られるからでしょう?
何も知らなくていいよ、その代わり僕の天使になって。
僕の天使はいなくなってしまいました。
天界から逃げ出してしまいました。リンゴの美味しさを知って、感情を得ました。
なんにもしらなくていいよ、なんにもしらなくていいから。
僕の天使になって。